こんにちは。今回の公演「額田大志×山下恵実 FURUMAiiiiiiiiiiiiiii」の記録を担当している今井夕華と申します。
普段は編集者をしながら、工場や企業の裏側「バックヤード」を観察する「バックヤードウォッチャー」としても活動しています。もともと多摩美術大学に通っていたのですが、文化祭のパフォーマンス音楽をつくってくれたことがきっかけで、演出家の額田さんと仲良くなり、今回の座組みに呼んでもらいました。
3週間ほどの滞在制作の様子をお届けしているこのレポートシリーズ。第3弾となるこの記事では、稽古中盤〜後半の様子をレポートしていきます!
7/25 稽古6日目
クラブでノリノリの人と、早く帰りたい人
この日はクラブでの動きを研究するため、クラブにいそうな人を再現してみることに。ドラマーの渡くんが、ドンツドンツとEDMっぽいリズムを奏で、クラブの雰囲気を出してくれています。
動きを指示する演出・振付の山下さん。
山下「最初はそれぞれ、音楽に合わせて身体を揺らしてもらって、途中で『何時までいる?』みたいな会話をしてみましょうか」
ダンサーの根本さんは、音楽に合わせてノリノリの人、額田さんは早く帰りたい人の役をやってみます。
額田「(少しリズムに乗りながら根本さんに近寄る)ねえ、何時までいる?」
根本「(ノリノリの身体を少し止めて腕時計を見る)もう少しいようかな」
額田「(頷いて、ちょっとだるそうに元いた場所に戻る)」
おお〜、額田さんの気だるさがお見事!偶然だけど靴紐もほどけているし、ちょっと猫背で、めちゃめちゃ帰りたい人に見えます。
今度は交代して、山下さんと渡くんがやってみることに。早く帰りたい山下さんは、音楽の途中で座り込んだり「脚が痛いな〜」と屈伸してみたり。会話するときに額田さんと根本さんは身体をクロスさせていましたが、今回は横並びになってみました。
会話の後、元いた場所に戻り急に音楽にノリ出す山下さん。どうして最後だけノリノリだったのかと聞くと「最後くらい乗っとかないと損かなと思って(笑)」とのこと。もうすぐ帰れる!と思って解放されてたんですね。
細かな心境や動作をみんなで確認しながら「あるある」のふるまいを探り、作品に仕上げていく。そんな工程を経て、タバコ、コーヒー、クラブと、だんだんパフォーマンスのパーツが出来てきました!
7/29 稽古9日目
鍛錬すれば大丈夫?
稽古9日目は通勤のシーンをつくっていきます。
額田「移動手段は何にしましょうか。最近みんな京都の移動でよく乗っているから自転車とか?あとは、電車、徒歩、車?」
山下「うーん、やっぱり電車が分かりやすいですかね」
渡「『満員電車』は日本特有の文化ですよね。海外だとマイカー通勤も多いみたいだし」
話し合いの結果、電車通勤をモチーフに、音楽チームとダンスチームに分かれてパーツをつくってみることに。1時間ほどしてから再集合しました。
ダンスチームからお披露目します。
つり革を持って、近い距離で別々の方向を向いている二人。満員電車特有の、異常に近い身体の距離と、それぞれが無関心な様子を表現しています。
音楽チームは電車が走る音をモチーフに、渡くんが複雑なリズムの曲をつくりました。え、すっごい複雑……!幼少期ピアノを習っていた私ですが、全然楽譜が読めません。渡くんも額田さんも、まだまだイメージ通りに叩くのが難しい様子。
額田「(うまく弾けずに止まる)ごめん、もう一回ここのリズム教えてもらってもいい?」
渡「ウッダダ、ンダダダ、でここが三連符ですね」
額田「あー、ここ難しい(何度も弾いてみる)」
渡「額田さん、普段平気でこれくらい難しいの渡してくるじゃないですか(笑)」
普段、変拍子がたくさん出てくるバンド「東京塩麹」で活動しているこの二人。額田さんがつくった難しい曲に応えてきた渡くんが、ここぞとばかりに仕返しをしています(笑)。この人たちでも練習しないと出来ないんだなあ。
「そんなに難しいなら、曲自体を簡単にすれば良いのでは?」と聞く私。
額田「鍛錬すれば大丈夫です、人間なので」
人間なので……?鍛錬さえすれば変拍子を演奏できるようになるのか……?
渡「そうそう、頑張って練習すればそのうち出来るようになる、っていうか。たとえば絵がうまく描けなくても、モチーフを簡単なものに変えよう、とはならないよね。そんな感じかなあ?」
うーん、なるほど。確かにそれはそうかもな。まだ完全には分かんないけど、ちょっと分かったような気がします。鍛錬……。
ちなみにこれは渡くんのドラムセットです。いろんなアイテムが揃っているので、ここでちょっとご紹介!
中央上にあるのは「チャスチャス」という楽器で、なんと素材はアルパカの爪。カラカラとした音が特徴的です。金色の丸い円盤は「フィンガーシンバル」といって、キラキラした音が出ます。音を抑えるために、タオルが敷いてあるのも面白いですよね。
7/30 稽古10日目
本番に向けて、まとめていく
だんだんとパフォーマンスの全体像が見えてきた稽古10日目。舞台監督の脇田友さんと会場の使い方を打ち合わせます。舞台監督とは、この公演の場合「本番」をどうするか仕切る人のこと。公演の内容自体に意見をするというよりは「本番」に向けてのあれこれをやる役目なのだとか。
本番の会場となるのは、京都芸術センターの講堂です。登録有形文化財になっているだけあって、ロマンチックな内装!
脇田「客席には段差があった方がいいですかね?」
額田「そうですね。繊細な振りがあるので、多分段差があった方が後ろのお客さんも見やすいかなあ」
山下「足の指をちょっとだけ動かしたりするんですけど、お客さんにはそこまで見て欲しいですよね」
脇田「なるほど。じゃあ客席には少し段差を付けて、最前列はこの辺りにしましょうか」
へー、こうやって決めていくんだ。THE劇場というわけではなくて、自由に使える会場だからこそ、創意工夫が求められるなあ。
その後、初めての「通し」をしてみて公演時間がオーバーすることが発覚!どこのシーンを短くするか。音楽の盛り上がりとダンスの盛り上がりの波はどう持っていくか。などなど、本番に向けての課題点が多く見えてきました。
公演本番まであと1週間ほど。ここからどう仕上げていくんだろう!
公演前レポートはここまでで、次回は公演後にお届けいたします。まずは第3弾までお付き合いいただき、どうも有難うございました!本番もぜひ観に来て下さいね。バイバーイ!
執筆者プロフィール

今井夕華
Yuka IMAI
フリーランスの編集者/バックヤードウォッチャー。1993年群馬県生まれ。多摩美術大学卒業。小学校の頃から社会科見学が好きで、大学の卒業制作では多数の染織工場を取材。求人サイト「日本仕事百貨」を経て2020年フリーランスに。人間味あふれるバックヤードと、何かが大好きでたまらない人が大好きです。
額田大志×山下恵実『FURUMAiiiiiiiiiiiiiii』
2022年8月6日(土)、8月7日(日)
各日13:00/17:00
音楽・演出:額田大志
振付・演出:山下恵実
出演:根本和歌菜、渡健人、額田大志、山下恵実、ふるまい部の部員たち
会場
京都芸術センター館内各所
※当日誘導有り
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