FURUMAiiiiiiiiiiiiiii 稽古レポート2

こんにちは。今回の公演「額田大志×山下恵実 FURUMAiiiiiiiiiiiiiii」の記録を担当している今井夕華と申します。

普段は編集者をしながら、工場や企業の裏側「バックヤード」を観察する「バックヤードウォッチャー」としても活動しています。もともと多摩美術大学に通っていたのですが、文化祭のパフォーマンス音楽をつくってくれたことがきっかけで、演出家の額田さんと仲良くなり、今回の座組みに呼んでもらいました。

3週間ほどの滞在制作の様子をお届けしているこのレポートシリーズ。第1弾に引き続き、第2弾となるこの記事では、稽古中盤の様子をレポートしていきます!


7/22 稽古4日目

タバコをかっこよく吸いたい!

稽古4日目は「タバコを吸う」ということを研究します。実際に生活の中で行われている「ふるまい」から、公演のパーツをつくっていこうということで、ドラマーで喫煙者の渡くんが先生役に。まずは普段通り吸ってみる(という振りをする)ことにしました。

ちなみに(という振りをする)と書きましたが、京都芸術センター内は禁煙なので、教室内でも火はつけておりません。下にも紛らわしい写真が続きますが、エアタバコですのであしからず!

渡くんは、ライターをカチッと押して、タバコに火をつけ少し吸う振り。片足に体重をかけて、片手はポケットに入れています。スパーと息を吐いたあと、斜め上を見てぼんやり。また少し吸って、ぼんやりしたら、ポケットからスマホを取り出しいじり始めました。

タバコを吸いながらスマホを見る感じ、エアといえどもかなりリアル!タバコを吸ったことがないという、演出・振付の山下さんと、ダンサーの根本さんは「細かな動作まで見逃せない!」と、熱心にスマホで撮影しています。

よく考えると難しい動作

「タバコを吸う時間自体は短め。息を吐いて、ぼんやりする時間が結構ポイントです」
根本「灰を落とすときって指はどう動かしてますか?」
「こんな感じかなあ(親指でトントンと弾いたあと、するりと持ち替え人差し指でトントンと灰を落とす)」
山下「結構複雑な動きですよね。親指でトントンとやるのと、人差し指でやるのって何が違うんですか?」
「ちゃんと灰を落としたいときは人差し指ですね。ああ、でも確かに、指の動きってよく考えると難しいかも。今までこんなこと意識したことなかったな」

やったことない動きは、たくさん練習しないと慣れている感じを出すのが難しいそうで、細部までヒアリングを重ねて真似してみているダンスチームのお二人。渡くんのヤンキー座りと比べて「なんか違う」感じがします。身体が柔らかいからなのか?タバコを持っていない方の腕がピンとしてるからなのか?内股気味だからなのか?

「なんか違う」の「なんか」って、小さなことだけど、けっこう大事なんだろうな。

かなり上達してきた根本さん。片足重心が様になっています。ダンスをやっている人のコピー能力って本当にすごいですよね!


7/23 稽古5日目

前も後ろも全部見える感じ

この日取り組んでいるのは「コーヒーを淹れる」というふるまい。豆をミルに入れて挽き、丁寧にコーヒーを淹れて、ゆっくりとマグカップを傾ける、という振りです。

額田さんと渡くんは、爽やかな気持ちの良い音楽を奏でています。例えるなら、カリフォルニアの大きい道をドライブしてるみたいな感じ?全然行ったはことないんですけど、そんな爽やかな雰囲気です。

何度か試しているうちに「ダンスや演奏をしているときには何を考えているのか?」という話題に。

根本「ダンスをしているときは、視野がすごく広くなる感じで、前も後ろも全部見える感じ!」
山下「鏡がなくても、常に自分の身体がどういう形か、どういう状況か把握しています」
「自分はドラムを叩くから、指先に結構集中しているかも」
額田「視野を広く持つの面白いですね。普段の音楽のライブとかでも生かせる意識っていう気がします」

実際に「視野を広く持つぞ」と意識して演奏してみる、額田さんと渡くん。目の前の鍵盤やドラムのことを考えるのではなく、見ている人や、たとえば部屋の隅で私がこの記事を書いているPCの「打鍵音」に意識を向けていたそう。

「これ、すごい練習になる(笑)」
額田「オッケーオッケー、なんか分かってきた!」

お、なんか分かってきたらしい!額田さんのテンションが上がっていて、こちらまで嬉しくなります。

お互いの感覚に歩み寄る

続いては、演奏する人が何を考えているのかもっと知りたいということで、根本さんがドラムを叩いてみます。タバコの仕草同様、自分で実際に体験して吸収していくスタイル。渡くん指導のもと「ズズダ、ズズズダ」とビートを刻んでいきます。

根本「うーん、難しい(叩くのをやめる)」
「はい、頑張って続けて!」
山下「スパルタ講師だった(笑)」
根本「腹筋に力が入っちゃいます」

頑張ってリズムを刻む根本さん。

根本「一定のリズムを叩いていると、なんか頭がグーって痛くなってくる……(笑)」
額田「本当は僕と渡くんがダンスを10年やって、ダンサーの気持ちを理解するのが一番いいんでしょうけど(笑)」

「自然」に見えるように「不自然」にやる

ダンスをしているときの気持ち、演奏をしているときの気持ちにそれぞれ寄り添ってみたあとは、もう一度全員でコーヒーを淹れる動きをやってみることに。山下さんが演奏チームに動きの指示を入れていきます。

山下「首を動かさないで演奏してみてもらえますか?目線もなるべく制御したい。やっぱり人は動いているものを見ちゃうので、演奏するのに支障がないけど、ずっと固定できる目の位置、首の傾き方を探りたいです」

なるべく動かず演奏してみる額田さんと渡くん。ずっと一点を見つめながら演奏していて、これだけみるとちょっと不自然でロボットっぽさがあります。でも根本さんの動きと合わせてみると、根本さんの動きにスッと集中できて、とても良い感じです!

額田「まだ慣れていないので上手にできないけど、トレーニングしたら変わる気がします」
山下「固まって演奏していると、緊張してるみたいで、すごい音楽初心者に見えますね(笑)」

根本さんの動きにお客さんの視線を集中させたいときは、額田さんと渡くんが固まり、音楽を聴いてもらいたいときは根本さんの動きをシンプルに。そうすることで、自然とスポットライトが当たっているような感覚になり「こっちを見てね」という誘導がスムーズになるのかも。そこだけ見ると絶対に不自然なのに、全体で俯瞰すると自然に見えるのって面白いな。

公演のパーツがだんだん出来てきたレポート第2弾。いかがだったでしょうか?次回「稽古6日目 クラブでノリノリの人と、早く帰りたい人」に続きます。お楽しみに!


執筆者プロフィール

今井夕華
Yuka IMAI
フリーランスの編集者/バックヤードウォッチャー。1993年群馬県生まれ。多摩美術大学卒業。小学校の頃から社会科見学が好きで、大学の卒業制作では多数の染織工場を取材。求人サイト「日本仕事百貨」を経て2020年フリーランスに。人間味あふれるバックヤードと、何かが大好きでたまらない人が大好きです。


額田大志×山下恵実『FURUMAiiiiiiiiiiiiiii』
2022年8月6日(土)、8月7日(日)
各日13:00/17:00
音楽・演出:額田大志
振付・演出:山下恵実
出演:根本和歌菜、渡健人、額田大志、山下恵実、ふるまい部の部員たち

会場
京都芸術センター館内各所 
※当日誘導有り 

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