
はじめまして。今回の公演「額田大志×山下恵実 FURUMAiiiiiiiiiiiiiii」の記録を担当している今井夕華と申します。普段は編集者をしながら、工場や企業の裏側「バックヤード」を観察する「バックヤードウォッチャー」としても活動しています。もともと多摩美術大学に通っていたのですが、文化祭のパフォーマンス音楽をつくってくれたことがきっかけで、演出家の額田さんと仲良くなり、今回の座組みに呼んでもらいました。卒業してすぐに編集の仕事に就いたため、アートの世界から縁遠くなってしまっていた今日このごろ。久しぶりに制作現場の空気が吸えるのが楽しみです。
今回は、8/6〜7の公演本番に合わせて行われる、3週間ほどの滞在制作の様子をレポートしていきたいと思います!夏の京都に3週間。ちょっと浮かれ気分でお送りして参ります。
7/18 稽古1日目
夏の京都で集合
稽古初日、15時過ぎに京都芸術センターで集合します。今回の制作メンバーである音楽・演出の額田さん、演出・振付の山下さん、ドラマーの渡くんは東京から新幹線でやってきて、ダンサーの根本さんだけ後日合流する予定です。
今回の滞在先となる京都芸術センターは、もともと小学校だった建物で、かなりレトロな雰囲気。学校という要素も相まって、夏休み感があります。
渡くんはさっそくドラムをセッティング。この稽古のため、ケースに入れて送ってきたそう。山下さんはストレッチをしています。当たり前の意見ですが、身体が柔らかくてびっくり。

音楽を起点に、ダンスを考える
コーヒーを飲んでゆっくりしつつ、この日はまず渡くんにドラムのパターンをつくってもらうことに。ドラムを叩きながら、黒板にメモをする渡くん。今まで演奏したことがあるフレーズを組み合わせて、5分ほどの曲ができました。「そこはか」「だれくら」は、額田さんと渡くんが所属しているバンド「東京塩麹」の曲名の一部です。

まずはシンプルに演奏をしてみます。ざっくりいうと、ぐちゃぐちゃ→揃ってきて→リズミカル!って感じですね。山下さんが渡くんに振りを付けていきます。
山下「演奏しながら、途中で手元を見る、その後自分の右肩を見る。そして後ろを見る、手元に戻ってくる、でやってみてもらえますか。あ、いいですね。じゃあ次は手元を見てから、自分の右肩を見るときに、まず目線を移動させて、その後アゴを移動させる、でやってみてください」
演奏しながら身体を動かす渡くん。けっこう対応できていてすごい!私は運動音痴だからあんなに器用に動かせないだろうなあ。ていうかこの公演、渡くんも踊るんだ……!

そこからいくつかパターンを試してみて、感情をどこまで出すかを検討。音楽はもともとリズムがあるから、悲しく見せるのはできても、楽しく「ダンスとして」演奏をみせるのは難しいということに。
額田「音を止めて、お客さんと目を合わせるっていうのいいですね」
山下「上半身だけで、ダンスに見える気がします。『楽しい』じゃなくて「リラックス」ならできるかも」
最終的にこの日できた動きはこんな感じ。
・下手側にある窓を見たいという思いで、限界までグーっと身体を伸して何かあるのか探る
・窓の外にいる人と目が合う、動物がこっちを見ているとか、そういったことにハッと気付いて上を見る
・目をシパシパさせながら顔を上から下に移動させる
・おへその部分まで見るように身体を丸め、うずくまる
・肩に力を入れて深呼吸しながら身体を上げて、吐くときにスーッと脱力、目は閉じている
・ゆーっくり身体を揺らしながら、だんだん目を開け、揺れのペースを上げていく
・揺れのペースをできる限り早くしていって、ある程度時間が経ったと思ったら、斜めで止まる
・身体を真っ直ぐに戻して終了
じっくり考えつつ、思いついたことはすぐに試してみる。その都度相互フィードバックをし、和気あいあいとした雰囲気で稽古を進めているのが印象的でした。1時間に1回、15分くらい休憩を挟むのは額田さんの稽古ならではなのかな。休憩中は、みんなで学生時代の話をしたり、振り返りをしたり、考え込んだり。休憩といってはいるけど、さっきの時間で考えたことを消化している作業なのかも。普段の編集作業だと、集中して2時間くらいやっちゃうけど、これくらいゆったり「間」の時間を取るのいいな。
7/20 稽古2日目
つま先の動きまで確実にコントロールする
稽古2日目は14:00から活動します。全然知らなかったのですが、演劇系の稽古は午後とか夕方開始で夜までやる、ということが多いそう。みんな朝起きられないというのと、昼間副業をしているからという理由があるみたいです。編集の仕事をしている私は、朝9:00に埼玉の工場で取材、といったことがあるあるなので、業界によっての「暗黙の了解」みたいなものって面白いなあと思います。

写真中央は、この日から合流したダンサーの根本さん。前回の稽古でドラマーの渡くんがやっていた動きを根本さんにやってもらいます。
渡「シンプルにうまい!(笑)」
額田「当たり前ですけど、ドラム叩きながら動くのと違って、身体全身を使って表現できるから、感情の動きが分かりやすいですね」

いや本当に、表現力がすごい!「THEダンス」というような激しい動きではないんだけど、根本さんがグーっと身体をゆっくり丸めると、すっごく悲しそうに見えるし、ただ無言で佇んでいるだけでも目で何か言っているような感じがする。
根本「ジャンプをするときに、つま先を伸ばすのか、曲げるのか、気になっちゃいます」
渡「そんなところ気にしたことなかった。やっぱり身体に対しての解像度が高いんだな」
私も全然気にしたことなかったけど、そういう細かいところまで、一つひとつの筋肉を丁寧に動かしてるんだなあ。ダンサーや役者の仕事道具は「身体」だということをひしひしと感じました。
「セッション」はやっぱり違うね
その後、今回の趣旨とは方向性が違うと思うけど、それを確認するためにも1回「セッション」をやってみようということに。
額田さんがキーボードを弾き、渡くんがドラムを叩く。それに合わせて山下さんと根本さんが踊る。わ、すごいすごい!みんな自由で楽しそう。全然練習しないでこんなにすごいものができるんだ。ゆるやかな音楽から始まり、激しい雰囲気になると、額田さんも走り出す。躍動感がすごい写真も撮れました。

ひとしきり動いた後、おもむろに終了。あ、セッションってこんな感じで終わるんだ……。みんな無言で、ちょっとニヤニヤしながら円になると、山下さんが一言。
山下「『やりたいことは、これじゃないな』ということを再確認しましたね」
やっぱり違ったー!この人たちがやりたかったこと、やっぱりセッションじゃありませんでした!
額田「演奏の気持ちよさに浸ってしまうというか。つい『いい音楽』にしちゃうんですよね。今回は『いい音楽になっちゃう』『いいダンスになっちゃう』のをいかに制御しつつ構成するかがポイントですね」
この稽古、一体どうなっちゃうの?次回「稽古4日目 タバコをかっこよく吸いたい!」に続きます。お楽しみに!
執筆者プロフィール

今井夕華
Yuka IMAI
フリーランスの編集者/バックヤードウォッチャー。1993年群馬県生まれ。多摩美術大学卒業。小学校の頃から社会科見学が好きで、大学の卒業制作では多数の染織工場を取材。求人サイト「日本仕事百貨」を経て2020年フリーランスに。人間味あふれるバックヤードと、何かが大好きでたまらない人が大好きです。
額田大志×山下恵実『FURUMAiiiiiiiiiiiiiii』
2022年8月6日(土)、8月7日(日)
各日13:00/17:00
音楽・演出:額田大志
振付・演出:山下恵実
出演:根本和歌菜、渡健人、額田大志、山下恵実、ふるまい部の部員たち
会場
京都芸術センター館内各所
※当日誘導有り
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